「苦手があるのは当たり前やん」
前回の続きです。
特別支援学級の6年生うーくんと、たくさんのお友達が、
みんなで楽しく遊ぶためにお互いを考える瞬間をどうぞ。
「うーくんおいていってる」
6年生男子龍樹(たつき)の言葉に、周りの注目が集まります。
学級委員や部長などを任される、典型的リーダータイプの男の子です。
学校全体でも有名人で、どの学年の子もみんな龍樹くんの名前を知っていました。
うーくんとは保育園から一緒らしく、彼のことを長く見てきたうちの一人でもあります。
ぼくも龍樹くんと委員会をやっていましたので、彼の言葉にうーくんを貶すものはないだろうと信用していました。
任せたのはやはり正解で、龍樹の意見にみんなが納得します。
「うーくんは俺らとやれることと、やれんことがあるけど、やれるかやれんかはうーくんが決めることじゃん。どうしたいか、うーくんに聞こう」
うーくんどうする?と龍樹。
その言葉を変わらずニコニコと聞いていたうーくんは、少し考える素振りを見せた後、
「たつきくんといっしょにやる」
と言いました。
「おっけー。じゃあルールは6年生のやつと一緒だけど、俺とうーくんは2人でチームね。俺が捕まってもうーくんが捕まってもどっちも鬼ね」
龍樹の意見に、みんなは快くオッケー!と笑顔を見せます。
うーくんはニコニコ。
みんなもニコニコ。
ちぃちゃい子も大きい子も交ざりに交ざって、仲良く鬼ごっこが始まりました。
龍樹くんは足が速いのでビュンビュン走り回り、その後ろをうーくんはてとてと着いていきます。
高学年はうーくんに分からないくらいの手加減で彼を追いかけ、
みんなは「うーくんがんばれ!」と声援を送り、
龍樹は「うーくんを守る!」と鬼に立ちはだかっていって捕まる。
校庭は笑い声に包まれます。
「龍樹とうーくんは二人で一人だから、龍樹が捕まったならうーくんも鬼だよ!」
「せっかくうーくん逃げてたのにー!(笑)」
「たつきくんちゃんと逃げてー!(笑)」
周りをわっと沸かせて、わざとおどけてみせる龍樹は
「うーくんすまん捕まった!次は鬼、行こう!」
と、うーくんの手を引いて鬼ごっこを再開しました。
ルールは、みんなが楽しく遊ぶために必要なものです。
ですが、平等と公平は違うもの。
考える時間が大人にも必要です。
でも子どもたちは、こうして日常の中で自然と「違い」を理解しあい、許容しあって成長しているのですね。
教えようと思って目指した教師の道ですが、子どもたちには毎日教えられてばかりです。
1年生の女の子が駆けてきて、きゅっと手を握ってきます。
「ハルせんせー次は鬼ね!」
それをどこかから聞いていたのであろう龍樹が、おどけた声で叫びました。
「次ハルせんせーが鬼!大人だから片足でケンケンして走らないとダメね!」
みんなは笑顔でオッケー!と賛成。
うーくんもオッケー!って……ちょ、ちょっと待ってよ大人のハンデ結構厳しくない?