「いつも背中を見守っているから、君の未来を見せてくれ」
子どもたちは、いつも大人に新しく懐かしい世界を見せてくれます。
鮮やかに、彩った景色を、褪せることを知らずに。
その小さな身体と心で目一杯命を燃やし、ちっぽけな大人でしかないぼくの存在を豊かにしてくれる。
子どもたちが生きているのは決してぼくのためではないけれど、ぼくが生きるための力を確実に与えてくれています。
児童養護施設の子どもを連れて、よく近所を散歩する。
毎日元気に、よく食べ、よく遊び、よく笑う。ぼくの天使たち。
一対一で手を繋いでゆっくり歩く。
突然、
ぼくをその場に残して駆けていく背中。
かと思うと、とたんしゃがみこんで道端の花を見る。きいろー、という明るいが聞こえ、ぼくは大きな声でほんとだねー!と返す。
声に対する返事はない。
しかし、きちんと後ろにまだぼくがいることを確認し、安心した様子でその先へまた駆けていく。
そろそろ交差点の曲がり角だ。そこを曲がると、小さく自由な背中が見えなくなる。
不安にかられる。
車通りはないが、何が危険かわからない世の中だ。
少し足を速めるぼく。
汗ばむ首筋、強まる足取り。
しかし、
自由な背中は、ガードレールにもたれ掛かってぼくを待っていた。
目がはたと合い、お互いが無意識の息をつくのがわかった。
あぁ、この子は。
当たり前に、ぼくがいることを享受し安心を得ている。
その無意識の事実がどんなにぼくを力付けるのか、君は知らない。
その無意識の事実がどんなにぼくを奮い立たせるか、君は知らないだろう。
この世に生まれた君を、ただ育み慈しむことを許されている。
なんて尊いの。なんて尊いの。
ぼくと君が此処で出会えたことが、君にとってあたたかいものになるといいなぁ。
ぼくと君が此処で出会えたことに、何か意味があると信じている。
愛を押し付けたり、突然奪い取ったり、そんなことはしないと約束するよ。
ただ、君の自由を守るために生きていくことを許してほしい。
自由な背中を守るために、後ろを振り返ればいつもそこに居る。
自由な背中を押すのも、ぼくがするよ。
自由な背中を守るから、君はいつでも自由に、未来へ駆けていって。
生きづらい世の中だから、ぼくのこの気持ちが要らない風を避けるマントになればいい。
時にその布は風を受けてはためいて、君の大きな後ろ楯になればいい。
ぼくがいることが、君たちの守りなるように、ぼくはこの先を生きていく。
出会った小さな子どもたちにも、大人のなかにいる子どもたちにも、ぼくの言葉と存在が守りとなるような、そんな大人に。
ぼくは運よく、せっかく大人になったんだから。
守られるべき愛しい君を守るよ。