「その子が生きにくくなければ、食べられなくてもよいのだと思うのです」
誰にでも苦手な食べ物ってありますよね。
食べられないわけではなくとも、できれば食べたくない、必要がなければ口にしないという食品がありませんか?
ぼくは食べられないものこそありませんが、パクチーはできれば食べたくありません。に、匂いが苦手で……。食べられなくはないですが……。
火がきちんと通っていないお肉は楽しめませんし、柑橘系の皮は苦くて美味しくない……。
さらに大人になってから、にんじんって臭いやつとかまずいやつある……!と気がつきました。
子どもの好き嫌いは矯正すべきなのか?
子どもの偏食に悩む親御さんも多いですよね。
玉ねぎ食べてくれない!とか、ピーマンどうしても口に入れてくれない!とか。
また、ヨーグルトしか食べない、リンゴしか食べないなど、ひとつの食品しか食べないという子どももいます。
ぼくは、好き嫌いや偏食は無理やり矯正する必要はないと思うのです。
人参嫌いの悩み
ぼくの勤めている児童養護施設に、にんじんが食べられない子がいます。
小学4年生の優(まさる)くんです。
給食のメニューを見て溜め息をつき、晩ごはんのメニューを見て溜め息をつき……。見ているこっちが切なくなってしまう。
ぼくが夕食を作るときには、
「ハルくんにんじん小さく切ってくれる?」
と真剣な顔でお願いされる。任せて、ハルくんもにんじん小さくないと食べられない。仲間の握手だ。
にんじんはたくさんの料理に使われており、ほぼ回避することができません。
ぼくの苦手なパクチーは、回避が可能な食品です。生肉も、柑橘系の皮も、日常で食卓に出てくることは少ないです。
ですから、給食で困ったことはありません。
対して、にんじんは、学校の給食ではほぼ毎日使われます。
彩りもいいですし、栄養も豊富、価格も比較的安価なのでメニューに取り入れやすいのです。優ごめんよ、ハルくん大人になってから気づいたから、給食ではにんじんと闘っていないんだ……。
好き嫌いのある彼へ伝えたこと
ぼくが優にいつも言うのは、決まってこの言葉です。
食べられないものを無理に食べて、体調が悪くなったり、悲しい気持ちになったりするのは良いことじゃない。
優がにんじんを食べられることと、優が健康でいられることは実は別のこと。
にんじんのせいでご飯が楽しくなくなっている?にんじんのせいで給食のときに緊張している?それって、健康のためになっているのかなぁ。
優が健康でいられるほうがぼくは嬉しい。
だから、食べられないものは食べなくてもいい。ただ、無駄にしないようにだけ気をつけよう。
給食なら、先ににんじんを減らしておく。みんながおかわりで食べてくれるからね。
施設ではハルくんや他の職員に相談して、優のにんじんを小さくする。ハルくんはこういう考えだからにんじん抜いてあげられるけど、食べなよ、って言ってくる大人には工夫をしてもらおう。それは優の健康のために、大人がするべきことだからね。
優は学校のにんじんは、「1つだけ食べる」と先生と約束したそうです。
「給食の1番最初にそのにんじん食べちゃえば、あとはうまい!」
とにこにこ。よかったね。相談できて偉かったね。いいぞー優。
食事の楽しみ方は人それぞれ
食が楽しくなければ、嫌いな時間も増やしてしまうことになります。
栄養が偏るし……みんなに食べろって言われるし……
栄養は、食べられるもので同じ栄養を摂れば大丈夫。
にんじん食べられないなら、にんじんの栄養が入っている他の食品を食べればよいだけです。
世の中には様々な食品が溢れています。
調理の仕方もたくさんある。調味料もたくさんある。
大人は工夫ができるのです。
子どもの楽しい食事のため、好き嫌いを受け入れる提案もひとつ、ここでしておきたいです。
余談。アレルギーのお話もまた今度しましょう。