「支援者として、この障害を啓発していきたい」
解離性障害とは?
解離性障害とは、どんな障害なのか?
厚生労働省では、「解離性障害は、自分が自分であるという感覚が失われている状態」とまとめられています。
詳しくはこちらから。
ぼく個人の解釈でざっくり言いますと、
「ストレスから心を守るため、脳が“勝手に”意識を遮断する障害」
です。
堪えきれないストレスを受け、身体はそこから逃げられない場合
意識を遮断し、感覚を鈍麻させたり
記憶を残さず、元々なかったこととして消去(隠滅)したり
自分以外の人が受けているストレスだ、と自身に誤認させたり
とにかく離れないとという思いで遁走したり
それらを全て、
本人の意思とは別に
脳が勝手に行ってしまうのです。
特に記憶の保持は難しくなり、継続的なはずの記憶が切断されてしまうことで、当事者は苦しんでいます。
「記憶が抜け落ちて、自分のやったことの責任がとれない」
「何をしていたかわからない時間が多すぎる」
と、嘆く当事者を何人も見てきました。
非当事者のぼくに説明してくれたなかで一番しっくりきたのは、
「脳みそが勝手にどこかへ出掛けていく」
という表現です。
記憶があるときもあれば、ないときもある。
自由奔放過ぎる脳みそが勝手にそこかしこへ出掛けて行って
土産話をしてくる日もあるし、
行ってきたよ!とだけ報告してくる日もある。
脳みそと一緒に出掛けている日もあるけど、主導権は脳みそにある。
などなど。
記憶の有無は、症状の重さやその日の体調、性格特性にもよるのだそうです。
解離性障害を知ることになったあの日
ぼくと解離性障害との出会いは、親しい友人がきっかけでした。
同じ職場で働く彼女が、聞きなれない障害により退職すると言うのです。
退職の報告と共に、こっそり打ち明けてくれた病名が「解離性障害」でした。
そもそも病名も知らず、どんな症状があるのかも知らなかったぼくは、そこから猛勉強をして解離に詳しくなりました。
当事者の話を聞いたり、彼女の言動を思い出したり、文献をたくさん読んだり。
この記事は、解離性障害罹患の当事者としてではなく、
支援者としての目線で解離による記憶の様々なケースをご紹介し、啓発したいと思います。
解離性障害と記憶の保持~当事者の話~
今日は解離性障害における「記憶」について、ピックアップしてご紹介します。
解離中の記憶って、あるの?ないの?
①解離中の記憶がある
・鮮明にわかる
・記憶もあり、「今解離してるな」とわかる
・いくら解離が酷くても、記憶だけは保持されている
・音が遠くなっていく感覚はあるが、出来事は覚えている
・解離中は、自分の姿を後ろから見ている。(何をしていたかは把握できる)
・記憶はあるけれど、身体は動かない
②解離中の記憶はあるが、あやふやである
・まるで他人事のように感じ、伝聞で聞いたことのように思える。
・ぼーっとしていて、ふわふわした記憶がある
・記憶の映像に白いもやがかかっている感じで頭に残る
・解離中の出来事が夢なのか現実なのか判断がつかない。
・なんとなく覚えているが、詳細を聞かれると答えられないことがある
③解離中の記憶はあるが、思い出すのに時間がかかる
・解離してパニックになっているときは思い出せないが、精神が安定しているときに思い出せるときがある
・冷静になって振り返ると、解離中の記憶がよみがえってくる
④解離中の記憶はない
・何も思い出せない
・覚えていないという事実もわからない
・記憶がないので、解離していたことにすら気付かない(人から指摘されて、解離中であったことを知る)
・解離前後の記憶がまるまるごっそり抜けている
・いつの間にか寝ていて、起きた!って感じで解離から覚める
・記憶はなく、時間がびっくりするほど進んでいて解離に気づく
記憶の有無は人それぞれで、時と場合による
解離性障害と一括りに呼んでいても、症状は人によって様々です。
その人の心身の調子、天気、ストレス環境にも大きく左右されます。
今日はこうだったから明日も同じ、ということはないのです。
1日のなかでも、朝と夜とでは体調が変わっていることもありますよね。
毎日変化する症状を注意深く観察しながら、支援を考える必要があるのです。
また、解離性健忘(※記憶を手離すということ)は周囲に正しい理解が得づらく、
心ない言葉や態度を浴びることもしばしば。
当事者を孤独に置き去りにしてしまうことのないように、支援者としてできることを増やしていきたいです。
ぼくが今できることは、
周知です。
啓発です。
それから、勉強です。
自分の支援したい当事者の方が生きやすく在れるように。
守りたい彼らに、自分の思いが届くように。
まずはぼくらが、周囲への啓発を始めてみませんか。
解離性障害という障害があります。
ストレスから精神を守るために、脳が勝手に意識を遮断します。
記憶に関わる、難しい症状があります。
目には見えませんが、見ようとすると、気付くことができます。
正しい知識を周りに知らせて、生きやすい環境を作りたいですね。