子どもが僕らを素敵な先生にしてくれる。

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児童養護施設、小学校、教育系大学、教育実習、療育施設などで経験した事柄を連ねる、徒然なるままにが過ぎるブログ

ぼくらのたからばこやさん

感覚過敏の五感を守る、1枚の大きな布

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「不安と不快から心身を守ってくれる、心強いマントだ」

発達障害児にもよくある感覚過敏症の実録

ぼくの勤める児童養護施設には、感覚過敏の子どもが複数います。

肌(触覚)が過敏で、決まったもの以外の服の素材に不快感を感じたり、

視覚が過敏で、昼の世界はいつも眩しく感じられていたりします。

 

今回は、敏感な世界に生きる感覚過敏の子どもたちと、その支援者ぼくの「共同解決思案実録」を書き連ねていきます。

 


感覚過敏について詳しくは、厚生労働省のこちらのサイトをご参照ください。

嗅覚過敏、聴覚過敏に苦しむ子どもたち

嗅覚が過敏なために、苦手な匂いは体が受け付けず、決まった食材しか食べられない子がいます。

名前はHさん。

我慢して強い匂いの料理を食べると、後々パニックを起こしてうずくまってしまいます。

施設では、食べられない料理は食べなくていいことになっているのですが

「皆と同じがいい」と言って頑張ってしまうのが彼女です。

 

魚の生臭さ、匂いが独特なハーブ、外国製のお菓子は、嗅覚過敏界隈ではありがちな苦手です。

強い香りの洗剤で洗った食器がダメな子もいます。

炊きたてのご飯の匂いがどうしても嫌な子もいます。

Hさんも、上記した全てが苦手で、日常生活における食事に大きな影響が出ています。

 

 


聴覚が過敏なために、さして大きい音ではないにも関わらずパニックを起こしてしまうMさん。


聴覚過敏の彼女は、一般の聴覚よりも

「これは嫌な音だ」

と感じる音の種類が多く、部屋から出られない日もあります。

 

具体的には、救急車のサイレン、大型トラックの走行音、スピーカーを通した声、テレビの効果音、踏み切り、鳥の鳴き声、女性の叫び声などなど……

挙げればきりがありません。

 

Mさんにとって外の世界は、嫌な音がどしゃぶりに降り続ける世界なのです。

音によっては体を刺すように感じて、「痛い!」と泣きわめくこともあります。

感覚過敏の対策手段と、実際に効果のあった方法

感覚過敏は、薬で治るもんじゃあありません。

病気という認識も少し違います。

自分の持っている感覚が鋭く、鋭いが故に起きてしまう弊害が、感覚過敏の症状なのです。

症状、ってのも……なんだか違う気がするけど……

うーん……見合う言葉が見つからないので、今はそう呼ぶことにします。

 

ぼくは考えました。

 

過敏症を治してあげられないにしても、緩和はできるかも。

 

症状が出て辛そうな彼女たちを、見ているだけより余程マシです。

彼女たちにも協力してもらって、試行錯誤の日々。

いくつもの対処法を、何日か続けていくうちに

ひとつ効果的な方法が見つかりました。

実際施設で行っている感覚過敏の対処法を、ご紹介したいと思います。

 

手触りの良い、1枚の大きな布で守る

ある日、感覚過敏でパニックになり、部屋の隅にうずくまっているHさんを見つけました。

 

おや、クールダウン中だ、静かにしよう。


そうっと横を通りすぎようとしたその時

洗濯をしようとしていたぼくの手には、Hさんが使っているブランケットがあることに気づきました。


たまたま持っていた、Hさんのブランケット。

「うう~」っと唸る彼女の前に置きました。

 

それに気づいたHさんは、もそもそとその大きな布を広げ、体に巻き付けます。

口元と鼻を覆い、深く息を吸う。

数回それを繰り返して、ぼくに「ありがとう」と一言。

 

もしかして、ブランケットはパニックを治める効果があったのでは?

 


後々彼女に話を聞くと、

「人に抱きしめられるとその人の匂いがあるから余計困るけど、ブランケットは自分の匂いがするから、とてもよかった」

とのことでした。

自分の匂いを嗅ぐことで、いつもより格段に早く落ち着いたと。

体に巻きつけた布の刺激も、安心を促したようです。

Hさんには、これから自分がパニックになったらブランケットを差し出してほしいとお願いされました。

また、安心する匂いを消してしまわないように、Hさんのブランケットの洗濯回数を減らすことが決まりました。

健康に支障が出ない程度の衛生なら、それでいいのです。

 

 


ブランケット療法?は、

Mさんにも、同じように効果がありました。

 


送迎中の車内で音にまみれてパニックになっている彼女の頭からすっぽりと

ブランケットを被せて、抱きしめました。

 

すると、叫んでいた声は次第にやみ

体の緊張もスッと解れていくのを感じました。

 

ブランケットを被せたまま、Mさんに話しかけます。


今、安心?落ち着いた?

 

彼女は、

「この中いいね。おまもりマント。」

と強張った手足を伸ばして言いました。

 

 

物理的に音が遮断され、嫌な音が遠くなったのはもちろんですが

大きな布が身体を覆っている状態が、子どもの安心に繋がったのだと考えます。

恐らく、布を被ることで本能的な安心を得たのではないかと予想をたてています。

お守りマントで感覚過敏を緩和する

ぼくの勤める施設では、MさんとHさんを筆頭に、困ったら布を被ってみよう!を密かに実施しています。


安心が得られて、感覚が守られる。


Mさんがつけてくれたお守りマントという名前で、正義の味方として重宝されています。

 

人に被せてもらうのではなく、自分から被りにいくのがポイントです。

パニックだ!助けて!お守りマント!って、手段を選択できていることに意味があります。


 
快適と安心作りのために、今日も大人は試行錯誤。

子どももそれに協力してくれているから、より良い方法を考え続けることができるのです。

 

大きな布、お守りマント以外にも、何か効果のある方法が見つかったら、また報告します。


皆さんにとっての「お守りマント」、ぜひぼくらにも教えてください。

効果のある方法は共有して、多くの子どもが生きやすくなるのが理想です。