「ふわふわして、ずっとだっこしていたいかんじ」②
前回から、深月くんと紙風船で「力加減」を練習するために準備をしておりました。
それではさっそく実践に移りましょう。
1球目。
深月くんのサーブです。
構えはめちゃめちゃ様になっています。
まるでオリンピックの選手であろうかという顔つき。
ヨーシ、バッチこーーい!
ところが深月くん、サーブを力みすぎて紙風船はぺったんこ。
へろりと地面に落ちます。
始めはそれでいい、できるまで続けましょう。
2球目。
ぼくが何も言わずとも、サーブを調整してくる深月くん。
さっきよりもスイングを小さくし、衝撃を減らしたようです。
しかしまだまだ強すぎる。
柔らかな紙風船はぺしょっと地面へ。
首をかしげる深月くんに、ぼくたち大人ができることは何でしょうか。
感性豊かで考える力のある深月くんですので、ぼくは直接的なアドバイスを避けました。
子ども自身で気づく必要があると感じたからです。
深月くん、1回目と2回目、手の振りが小さくなったように見えたけどどうして?
「だって強いとつぶれちゃう」
そうなんだ、つぶれないように小さい動きにしたんだね。
「うん、小さい動きはやさしくうてるから」
そうか!じゃあ力を弱くするためには、小さい動きで優しく当てればいいんだね!
これを明言した後の3球目。
ぽーんと弧を描いて紙風船はとび、ふんわり落ちてきました。
やったぁ!
つぶさないまま、紙風船をとばせたね!
今の感じ、忘れないように。
コツを掴んだ深月くんは、みるみるうちに上達。
ラリー10回はすぐに到達してしまいました。
やるな、お主。
さて、ここでまとめです。
深月くん、紙風船持ってみて。
?(はてな)をたくさん浮かべながらも、くしゃっとつぶれないように紙風船を持ちます。
うん、それだ、それでいい。
こわれやすいものの持ち方が、その力加減だよ。
うさぎも、紙風船も、くしゃっとしたらつぶれてしまう。
うさぎは痛い!と感じてしまう。
優しく、そっと、小さな力で、小さな動きでゆっくりと、大事に持つんだね。
「うさぎもこれでだっこできる?」
できるよ。
壊れやすいものの持ち方、忘れないで。
あとは深月くんがうさちゃんを怖がらないことだよ。
後日、深月くんが描いた絵日記を読ませてもらいました。
「今日は、うさぎのせわをしました。はじめてうさぎをだっこしたら、ふわふわして、ずっとだっこしていたいかんじでした。」
彼にとって最大に丁寧な字で、そう書かれていました。
おぉ!抱っこできてる!
よかったねぇ、よかったねぇ。
深月くんは小さな力で触ることを体験し、成功したのです。
「適切な力加減」は、自然な発達のなかで身に付く人が多いです。
でも、わからなければ、教えればいい。
苦手に気づいて教えることは、他でもない、大人の力です。
できることは活かします。
できないことは教えます。
できるようになりたいことは、協力します。
どん子にも当てはまる、誰でも変わりないことですよね。
文豪深月くんの日記にはこう続いています。
「あったかくてぷにぷにしてるので、冬のまくらにしたいです。うさぎまくらで、うさぎといっしょにねたいです」
うーん、その発想はなかった!!