「なかなおりしたから、またあそべるね」
子どもが社会的に不適応な行動を起こしたとき、大人は叱る義務があるとぼくは思っています。
子どもは社会のルールを「まだ知らないだけ」なので、既知の大人がきちんと教えていく必要があると考えます。
突然堅いことを言い始めましたが、今回もいつも通り子どもとのやりとりをご紹介しますよ~。
今日は太陽さんさん良いお天気。
学校はお休みだし、土日の多目にある宿題も終わったくらいの時間です。
児童養護施設では、たくさんの子どもたちが中庭に出て遊んでいます。
ぼくも子どもに遊んでもらおうと、庭に出ることにしました。
ぼくの姿を見るやいなや、ぴゅーんっと飛んできたのは小学3年生の太成(たいせい)くん。
その後をてくてく駆けてくるのが、お馴染みの深月(みづき)くんでした。
2人は同じ学年で、ゲーム好きという趣味も合って特別に仲良しです。
「ハルくんオニごっこやるでしょ?」
「ハルくんオニでも、おれは天才だから、どこへでもにげきれる。地球のうらがわまで3びょうで いける」
どっちがどっちの発言かは火を見るより明らかですが、上が太成、下が深月です。
深月は天才だからな!そりゃ勝てんわ!でも太成に大人の本気みせるし!と大袈裟に意気込んで鬼ごっこに参加。
他の子どもたちに「いーれーて!」と声をかけて、返事をもらってから参加するのはぼくのこだわり。
子どものルールにのっとって。
子どもたちと同じように。
見本になって。
大人だから許されることなんて、子どもの前では見せるべきでないのです。
鬼ごっこは滞りなく行われ、よくある子どもたちによる大人総攻撃に遭い、ヘロヘロになっていたときにトラブルが。
「ハルくん!深月が石投げた!」
太成が目に涙を浮かべて駆け寄ってきました。
やってしまった!
深月くんから目を離したぼくの責任だ!
太成の様子を確認すると、幸い当たった足には何の跡もなく、痛くないけどびっくりしたとべそをかいていました。
ぼくは内心全力でほっ……太成に怪我がなくてよかった~!
でもこれは厳しい指導をしなくては。
太成を抱き上げて、深月くんを呼びます。
「深月は太成に石を投げたの?」
ばつの悪そうな表情を浮かべる深月に、まずは事実の確認です。
トラブルがあったとき、片方の話だけを鵜呑みにして頭ごなしに決めつけるのは愚かです。
太成はぼくにしがみついて、ぐすぐす言っています。
深月はそれをちらっと見てから答えました。
「……なげた」
「投げちゃったか。ちゃんと正直に話せたね。でも、それは良いことかな?」
嘘をつける場面で正直に話せたことを認めます。
しかし、「正直に話せて偉いね」とは言いません。
太成に加害しているわけですから、褒められる場面ではない。
でも、認められることで次を話してくれやすくなります。
さらに、自分のしたことの善悪がわかっているか確認。
何となく楽しくてやった、良かれと思ってやったなど、子どもの行動には加害の意識がないこともあります。
深月は答えます。
「わるいこと」
「うん、ハルくんもそう思うよ。石を投げることは、悪いことだね。なんで深月は石を投げちゃったの?」
「太成においかけられて、にげたかったから」
そうかぁ。
必死に逃げて、鬼から逃れたい防衛本能で投げてしまったのね。
しょんぼりしている姿を見るに、「あかんかった」という意識はきちんとあるようで。
よかった、深月くん反省できるね。
と思ったハルせんせーのお話はまだ続きます。
次回へ続く!