「適切に緩やかに、育てて満たしていくのが大切」
児童養護施設では、2~18歳まで幅広い年齢の子どもたちが過ごしています。
幼い子どもたちは素直に抱っこやおんぶなど、スキンシップを求められることが多いです。
職員としても、甘えてくる子どもは甘やかしやすく、愛着の形成が比較的安易です。
一方思春期相手となると、性的な問題や自立の観点から、スキンシップへの難易度がグッと上がってしまうようです。
まだ大人に甘えたい気持ちと、子ども扱いされたくない気持ちが交差して、変な空気になってしまう子どもを目撃することもあります。
小学6年生の宏(こう)くんは、思春期真っ盛りの男の子です。
最近学校で性教育を受けたらしく、性的なことにぐーんと興味が増えたようで。
中学生の猥談に参加するようになったり、ちょっとしたエッチな言葉を悪口として使うようになったりします。
人間の成長には、性的な発達は当たり前のことです。
汚いものでも、いやらしいものでもありません。
性に興味をもてるほど成長した子どもたちに、正しい知識とマナーを教えるのが、大人の役目であり教育の一環であると思います。
ぼくは性教育について、一般的な教育者とはちょっと違った視点を持っているらしい。(大学の時散々言われた)
「性を神聖化したり、汚いものとして隠したりせず、ありのままを教える」のがハルくん流です。
宏は性的な成長は年齢相応ですが、精神年齢が幼めです。
まだまだ甘えたい気持ちもあるけど、ちょっとエッチなことに興味がある。
女性職員は宏に限らず性対象になりがちであるという警告から、小学校高学年になると急に距離を取ってしまっています。
なんか、これでいいのかなぁ。
そこでハルくんの出番な訳です。
ぼくは宏を複雑な感情をすべて引き受けることにしました。
性的な話も、甘えたい欲求も、否定せずすべて引き受けることにしたのです。
女性の話をしてきたときは、面白おかしく話したりせず、真剣にきちんとした知識を教えながらふたりで過ごします。
甘えたいとペターッとしてきたときは、耳掃除しよう、とか、ストレッチしよう、とか、ただのスキンシップに変わる何かを提案して健全な距離を取れるよう配慮します。
宏の欲求は満たされているようで、みんなの前で隠語暴言を吐くことはなくなり、他の職員への過剰な接触もなくなりました。
本来であればぼくの立場は母親が担う立ち位置とされているらしく、明らかに宏に欠けているものに間違いありません。
正しい性の知識と、緩やかな欲求の解消、甘えを受け入れる方法を模索して、思春期の男心を理解していきたい。
可愛い宏くんは今日も元気に「ハルくん一緒にストレッチしよ!」と言ってきます。