「何が正解かわからないから、その方に1番よいことを考え続けることがぼくが唯一できること」
たくさんの人でごった返す駅のホーム。
そのなかに、ぽっと目立つ姿が見える。
小さなおばあさんだ。
地団駄を踏みながら、何かを言っているようだが、ここからでは聞き取れない。
周りの人は気まずそうに、または堂々と知らん顔。
ぼくは考える。
こういうとき、ぼくにできることは何だろう。
統合失調症患者に対する周囲の反応
ぼくが近くにいくと、おばあさんの声が聞こえてきました。
「あんたたちは何処かにいって!」
「何よ!いつもいつも!私をバカにして!」
「どうしてこっちに来るの!」
早口だったり、不明瞭だったりで聞き取れない言葉もたくさんありました。
明らかに錯乱状態で、手に持っているカバンを振り回しています。
このままでは、周囲の方に被害を与えてしまうかもしれません。
しかし、周囲はちらちら見るだけで何もせず。
そんな反応も、自衛をしているのですから、何も悪くないとぼくは考えています。
例えばおばあさんを殴ったり、罵声を浴びせたりするようだったらそれは悪であると思います。
でもこの無言は、おばあさんを責めている訳でも、阻害しているわけでもなく、自衛のための「何もしない」選択。
これは、ぼくの世界では悪ではありません。
但し、ぼくは、ぼく自身は、統合失調症の存在を知っている。
周囲とはひとつ違う、知っている人間であるということは、「何もしない」以外の何かが、できるということなのでは?
統合失調症のおばあさんに実際行った対応
おばあさんの病名が統合失調症ではないにしろ、幻覚幻聴に怯えているのはわかります。
ぼくは、少しずつ近づいていって、話しかけました。
ぼくに何かお手伝いできますか?
するとおばあさんは、ぼくに向かってカバンを向けながら
「あんたもだよ!私のことをバカだと思って!騙されないよ!」
と声を大きくしました。
周囲はざわざわ。
恐らく刺激のすべてが敵に見える状態にあり、言葉の判別がつかぬほど苦しい状況にあるのだとわかりました。
これ以上見知らぬぼくに怯えさせるのは忍びない。
今駅員さんをお呼びしますね、怖くないところに行きましょう。
そう話しかけながら、おばあさんを壁側の椅子に誘導します。
おばあさんの話に相づちをうち、本当にそうですね、ぼくが守りますよ、と繰り返しながら、お話ができるタイミングを待っていました。
しかし、心理学を学んだわけでもなければ医師でもないぼくでは限界があります。
とにかくぼくは、おばあさんの側で周囲に怪我をさせないように、おばあさん自身が危害を加えられないように見守ることにしましたが……。
暫くたっても落ち着く様子はなく、電車にも乗らないので、近くにいたおじさんに駅員さんを呼んでもらうことに。
駅員さんに付き添って個室にいくと、おばあさんは錯乱を強めました。
その様子を見た駅員さんの権限で、ご家族に電話していただくことになりました。
おばあさんのカバンの中には、住所や電話番号がわかるものがあり助かりました。おばあさんのどこに安心があるのか、どこに助けを求めればよいのか、わからないのでは切ないですからねぇ。
ぼくはその後、自分の帰路に着きましたが、なんだかモヤモヤーっとしたものが晴れないまま1日を終えることになりました。
統合失調症患者の皆さんに質問したい
この経験から、ぼくは「統合失調症について知っていても、できることはない」と自身に失望しました。
しかし、知らないことは、知ればよい。
わからないことは、教えを請えばよい。
みんなが、ぼくの先生です。
ぼくのために、皆さんにご協力いただきたいことがあります。
今回のおばあさんのように、幻聴、幻覚のある錯乱状態でいるとき、周囲にできる支援はなんでしょうか。
何があれば、困った状態から抜け出せやすいでしょうか。
どんな対応が、心を安らかにできますでしょうか。
当事者の方、経験者の方、医師の方、お願いいたします。
ぜひ、お聞かせください。
統合失調症って何?どんな病気?
ここまで話しましたが、統合失調症って結局なんなの?という方も少なからずいるはずです。
リンクを貼っておきます、ぜひご一読いただいて、知識としてください。
その知識が、未来のあなたを救うかもしれません。
詳しくは、URLをご覧ください。わかりやすく簡潔にまとまっています。
統合失調症の症状は多様なため、全体を理解するのが難しいのですが、ここでは幻覚・妄想、生活の障害、病識の障害の3つにまとめてくださっています。